はたらく仕組み図鑑 01 / 業種編
業種ごとに、お金の回り方を1枚の輪にしました。回り方が分かると、年収の上がり方も求められる力も忙しくなる時期も予測できます。どの業種が良い・悪いという話ではありません。

もくじ — 気になる業種から読めます
同じ「IT企業」でも、人の時間を売る会社と、ソフトを月額で貸す会社では、お金の回り方が正反対です。
エンジニアの時間を、月いくらで貸す会社。
売上のつくり方
単価×人数×月数
ここがポイント
「未経験歓迎」が多いワケ
人を増やすと、そのまま売上が増えるから。研修つきで未経験を採るのは、やさしさではなく構造の話です。
年収の上げ方は2本道
自分の単価を上げるか、見る人数を増やすか。技術を極めるか、まとめる側に回るか選べます。
会社がいちばん必死な場所
案件が切れると、その人の売上はゼロ。だから会社は仕事を切らさないことに必死になります。
1本のソフトを、何社にも月額で貸す会社。
売上のつくり方
社数×月額×続いた月数
ここがポイント
未経験の入口は「売る側」
1本作れば何社にでも配れるので、作る人は増やさない。増えるのは売る人と使わせる人です。
年収は数字で決まる
増やした数字で上がるから若くても上がる。かわりに、上がらない理由も数字で返ってきます。
勝負は売ったあと
解約されると積み上げた売上が消える。契約を取ったあとの仕事のほうが重い会社もあります。
人を増やして伸びる会社
続けてもらって伸びる会社
IT企業には、こういう役割の人たちがいます
同じIT業種でも、SIer型の会社にはエンジニアと営業が多く、SaaS型には営業・CS・マーケが多い。会社の稼ぎ方が、社内にいる職種の構成まで決めています。
同じ広告運用でも、他人の広告費を預かる会社と、自社の利益から広告費を出す会社では、立場も評価も別物です。
広告主のお金を預かって出稿し、その一部を手数料としてもらう会社。
売上のつくり方
預かった広告費×手数料率×続いた月数
ここがポイント
動かすのは他人のお金
自分のお金ではないお金を動かす仕事。成果が出なければ預かる額が減り、契約も切れます。数字から逃げられません。
年収は「預かる規模」で上がる
年収は「担当する広告費の規模」で上がる。だから大手を持てる会社かどうかが効いてきます。
未経験の入口が広い
未経験の入口が広い。担当が増えれば預かれる額が増えるので採用に積極的。ただし1人が持つ社数は多くなりがちです。
自社の利益から広告費を出して、自社の客を連れてくる仕事。
評価のされ方
客1人を連れてくる費用を下げる
ここがポイント
使うのは自社の利益
使うのは自社の利益。「使った以上に儲かったか」を毎回問われます。代理店より数字の当事者になります。
求人が少なく競争率が高い
求人が少なく、競争率が高い。1社に数人しかいないポジション。代理店で数字を出した人が移っていく流れが定番です。
商品づくりにも関われる
商品そのものを良くする側にも関われる。広告だけでなく、値段・売り方まで踏み込める会社もあります。
制作会社(Web制作・映像)は別枠 — 作った分だけもらう受注型で、回り方はIT編のSIer型と同じです。上の図をそのまま使えます。
広告や映像やサイトを、制作費をもらって作って納める会社。
売上のつくり方
案件数×制作費−かかった工数
ここがポイント
回り方は受託製造と同じ
発注をもらい、指定に沿って作って納める。納期が主役の世界です。
ポートフォリオがすべて
作ったものがそのまま営業資料。未経験は制作進行(スケジュール管理)から入るのが定番です。
直請けか、下請けか
代理店経由か事業会社直かで、単価も自由度も変わります。面接で聞いていい質問です。
他人のお金を預かって稼ぐ
自社のお金を使って稼ぐ
広告会社には、こういう役割の人たちがいます
あなたが今まさに使っているサービスの裏側です。なぜ求職者は無料で使えるのか、その答えがそのまま稼ぎ方になっています。
入社が決まったときだけ、企業から成功報酬をもらう会社。
売上のつくり方
決まった人数×その人の年収×手数料率
ここがポイント
真ん中に立つ仕事
紹介会社は、求職者と求人企業の間に立っている。左右のどちらとも話せる立場だからこそ成り立つ商売で、どちらか一方の味方になった時点で機能しなくなります。
無料のカラクリ
あなたが無料で使えるのは、企業が払っているから。だからエージェントは決まらないと1円も入りません。この構造は知っておいてください。
急かされていないか見る目を
だからこそ、急かされていないかを見る目を持ってほしい。合わない会社に決まっても、早期退職なら報酬が返金される契約が多く、無理に推すのは紹介会社にとっても損です。
成果がはっきり出る
働く側としては、成果がはっきり出る仕事。決定という分かりやすい成果があり、未経験からの入口も広い業種です。
自社で雇ったスタッフを他社で働かせて、働いた時間ぶんをもらう会社。
売上のつくり方
スタッフ数×時間×単価
ここがポイント
雇う会社と指示する会社が別
雇っているのは派遣会社、指示を出すのは派遣先。この「雇用と指揮命令が分かれている」ことが派遣の一番の特徴で、法律の規制が細かい理由でもあります。
決まった後もずっと売上
紹介型と違い、決まった後もずっと売上が入る。そのかわり、スタッフが辞めたり休んだりすると即座に売上が減ります。
回り方はSIer型と同じ
回り方はIT編のSIer型とほぼ同じ。人の時間を売る商売という点で同じ構造です。
社員の仕事はフォロー
社員として働くなら、仕事はスタッフのフォロー。採用と、辞めさせないことの両方が数字になります。
求人広告型はまた別 — 掲載した時点でお金をもらう仕組みで、採用が決まったかどうかは売上に関係しません。だから「掲載社数」が数字になります。
教える場と先生を用意して、月謝で続けてもらう商売。
売上のつくり方
生徒数×月謝×続いた月数
ここがポイント
SaaS型と同じストック型
入会で増えて、退会で減る。だから体験会と退会防止にいちばん力が入ります。
仕事は「教える」と「集める」の2つ
先生のほかに、教室長=集客と運営の仕事があります。未経験の入口はこちら側です。
山は春
入学・進級の季節に入会が集中します。繁忙期がはっきりしている業種です。
決まった瞬間だけ稼ぐ
働いている間ずっと稼ぐ
人材会社には、こういう役割の人たちがいます
紹介型の会社は営業がほぼすべて。派遣型になるとスタッフのフォロー役(コーディネーター)が加わります。「人と話す仕事」の中身が、紹介と派遣で違うので、そこを本人に確かめてください。
ものづくりの会社は、値段を自分で決められるかで二つに分かれます。愛知・東海には受託側の会社が多く、営業の仕事も大きく変わります。
自分で企画して作って、自分で値段を決めて売る会社。
利益のつくり方
(売値−原価)×売れた数
ここがポイント
値段を自分で決められる
値段を自分で決められるのが最大の強み。良いものを作れば利益が厚くなる。開発に投資できる理由もここです。
営業は「広げる」仕事
営業の仕事は「広げる」こと。取扱店を増やす、新しい使い道を提案する。値引き交渉に追われる度合いは低めです。
売れ残りは自社の損
売れ残りは自社の損。作りすぎ・在庫は直接効いてきます。何が売れるかを読む力が問われます。
取引先から図面と注文をもらって、そのとおりに作る会社。
利益のつくり方
受注額−かかった原価
ここがポイント
値段は相手が決める
値段を自分で決められない。だから利益を出す方法は「安く早く正確に作る」に集中します。改善活動が強い理由です。
営業は「取りに行く・守る」
営業の仕事は「取りに行く・守る」こと。相見積もりで負けない、既存の取引を切らさない。関係づくりの比重が大きい。
取引先の数を見る
取引先の数を見てください。1社に頼りきりだと、その会社の都合で仕事が消えます。分散していれば安定します。
値段を自分で決められる
値段を取引先が決める
メーカーには、こういう役割の人たちがいます
「メーカーから直接買えばいいのに、なぜ間に会社が入るのか」。その答えが、そのまま商社の稼ぎ方です。ここだけ図の形が変わります。
メーカーから仕入れて客に売り、その差額をもらう会社。
売上と利益のつくり方
取扱った金額×数%の差益
ここがポイント
間に入る理由は「肩代わり」
間に入る理由は「肩代わり」。在庫を持ち、代金を立て替え、小分けして運ぶ。メーカーも客も面倒なことを引き受けているから、抜かされずに済んでいます。
薄い利益×大きい金額
1件の利益は薄いが、扱う金額が大きい。だから億単位の商談を若手が担当することもあります。数字の桁に驚かないでください。
営業は両側を持つ
営業は「売り先」と「仕入れ先」の両方を持つ。どちらか一方だけの会社とは動き方が違います。人間関係の仕事だと言われるのはこのためです。
気をつけて見る点 — その商社が「何を肩代わりしているか」。専門知識や在庫機能がなく、ただ間に入っているだけの会社は、いつか外されます。
間に入って、面倒ごとを丸ごと肩代わりする会社。
商社・卸には、こういう役割の人たちがいます
建物は1社では建ちません。仕事を丸ごと受ける会社と、その一部を担う会社に分かれ、立場によって仕事の中身がまったく違います。
工事を丸ごと請け負い、専門会社に振り分けて、まとめて完成させる会社。
利益のつくり方
受注金額−実際にかかった費用
ここがポイント
もらう金額は先に決まっている
もらう金額は先に決まっている。だから利益は「かかる費用をどれだけ抑えられたか」で決まります。段取りがそのまま利益です。
施工管理は段取りの仕事
施工管理の仕事は、人・物・お金・工程の段取り。自分で作るのではなく、作る人たちを回す仕事です。ここは誤解されがちです。
天候と工期に振り回される
天候と工期に振り回される。忙しさが季節や現場の進み方で変わるのは、この構造から来ています。
元請けから工事の一部を受けて、人と技術を出す会社。
売上のつくり方
職人の人数×日数×単価
ここがポイント
回り方はSIer型と同じ
IT編のSIer型とまったく同じ回り方。人の時間を売る商売です。だから「人が足りない」が常に経営課題になります。
資格がそのまま単価になる
資格がそのまま単価になる。手に職の意味がはっきりしている業種で、未経験から入って資格を取る道が用意されています。
仕事量は元請けしだい
元請けとの関係で仕事量が決まる。取引先が1社に偏っていないかは、確認しておく価値があります。
段取りで利益を出す
人と腕で稼ぐ
建設会社には、こういう役割の人たちがいます
同じ「不動産」でも、決まった瞬間だけお金が入る仕事と、毎月入り続ける仕事があります。働き方も収入の波もまるで違います。
売りたい人と買いたい人をつないで、決まったときに手数料をもらう会社。
売上のつくり方
決まった件数×物件価格×手数料率
ここがポイント
決まるまで1円にもならない
決まるまで1円にもならない。人材紹介と同じ成功報酬型です。その分、決めた人が評価される仕組みになりやすい。
歩合の比率を必ず確認
歩合の比率を必ず確認してください。同じ「年収600万可能」でも、固定給が高い会社と歩合次第の会社では生活の安定感が別物です。
お客さんの都合で動く
お客さんの都合で動く仕事。土日や夕方に動くことが多いのは、買う人が動ける時間に合わせているからです。
物件を持って家賃をもらう、または管理を任されて毎月の管理料をもらう会社。
売上のつくり方
部屋数×家賃×埋まっている割合
ここがポイント
毎月積み上がる安定収入
毎月積み上がるので、収入が安定している。SaaS型と同じ回り方です。会社としても計画が立てやすい。
仕事は「切らさない・空けない」
仕事は「切らさない・空けない」。派手な契約より、トラブル対応と信頼の積み重ねが評価されます。
仲介と管理が同居する会社も
同じ会社の中に仲介と管理の両方がある場合も。どちらの部署に配属されるかで働き方が変わるので、面接で確認してください。
決めた瞬間に稼ぐ
切らさないことで稼ぐ
不動産会社には、こういう役割の人たちがいます
この業種だけ、他とはっきり違う点があります。値段を自分たちで決められないことです。ここを押さえると、人手不足の理由まで説明がつきます。
サービスの値段を国が決めていて、その大半が保険から支払われる仕組み。
売上のつくり方
利用者数×国が決めた単価
ここがポイント
値上げができない業種
値上げができない業種。だから人件費が経営を直撃します。人手不足と待遇の話がずっと続く理由がここです。精神論ではなく仕組みの問題です。
制度が変わると収入が変わる
制度が変わると収入が変わる。数年ごとの改定で、事業所の経営が一気に苦しくなることも良くなることもあります。
営業は「集客」でなく「連携」
営業職は「集客」ではなく「連携」。病院・ケアマネ・自治体との関係づくりが仕事です。売り込む仕事を想像していると、入社後にギャップが出ます。
ただし例外もあります — 自費サービス(保険を使わないリハビリ・自由診療など)は、自分たちで値段を決められます。求人を見るとき、保険の中の仕事か外の仕事かを確認してください。
値段は国が決める。だから量と制度への強さが勝負。
病院・施設には、こういう役割の人たちがいます
お店の商売は、売上も費用も1つの店の中で完結します。だから店長が小さな経営者になります。数字の作りがいちばん分かりやすい業種です。
お客さんが店に来て、その場で買う・食べる。売上も費用も店ごとに決まる商売。
売上のつくり方
客数×客単価
ここがポイント
利益は「引いた残り」
利益は「仕入れ・人件費・家賃」を引いた残り。この3つで売上の7〜8割が消えるので、残りは薄い。だから細かい管理が効きます。
店長は小さな経営者
店長は小さな経営者。シフト・発注・売上まで見るので、若いうちに数字を動かす経験ができます。この経験は他業種でも通用します。
お客さんが動く時間に働く
お客さんが動く時間に働く仕事。土日や夜が忙しいのは構造上避けられません。そこを納得できるかは事前に確認してください。
本部か、店舗か — 同じ会社でも、店舗で働くのと本部(商品開発・店舗開発・スーパーバイザー)で働くのでは仕事が別物です。将来どちらに行きたいかは面接で聞いておく価値があります。
店の数字を全部見られる、小さな経営の練習場。
小売・外食の会社には、こういう役割の人たちがいます
稼ぎ方は実はSIer型とほぼ同じ「人の時間を売る」商売です。違いは売っているのが答えであること。だから単価が変わります。
経験のある人の時間を、高い単価で貸す会社。
売上のつくり方
単価×人数×稼働した月数
ここがポイント
売っているのは時間と答え
回り方はSIer型と同じ「人の時間を売る」商売。違うのは単価です。答えを出すことに値段がつくので、同じ1か月でも桁が変わります。
だから稼働率が命
だから稼働率が命。プロジェクトに入っていない期間は、その人の売上がゼロ。「常に案件がある状態」を保つことに会社が必死になります。
未経験の入口は狭い
未経験の入口は狭い。売り物が経験そのものなので、若手は「調べる・作る」担当から入って年数で単価を上げていきます。年収は早く上がるが、稼働も重い業種です。
士業(会計・法律・鑑定)も同じ形 — ただし単価をつくるのが経験ではなく資格です。だから資格を取るまでが長く、取った後は安定します。
売り物は「答え」。だから稼働率と単価がすべて。
コンサル会社には、こういう役割の人たちがいます
モノを預かって、運んで、届ける。動かした量がそのまま売上になる、いちばん分かりやすい商売です。
荷物を運んだ量・預かった量に応じてお金をもらう会社。
売上のつくり方
運んだ量×距離+保管の広さ×日数
ここがポイント
売上は伸びるが利益は薄い
売上は伸ばしやすいが、利益は薄い。燃料費と人件費が直接効くので、「どれだけ無駄なく積んで走るか」で会社の差が出ます。
社会が止まると困る仕事
社会が止まると困る仕事。だから景気に左右されにくい反面、ドライバー不足と時間規制が業界全体の課題になっています。
現場職と管理職は別世界
現場職と管理職で仕事がまったく違う。運ぶ人と、配車・倉庫運営・荷主対応をする人は別。求人を見るときはどちらかを必ず確認してください。
止めないこと自体が、そのまま価値になる仕事。
物流会社には、こういう役割の人たちがいます
電気・ガス・通信・再エネ。先に大きな設備をつくって、長い年月で回収するという、他とは時間軸の違う商売です。
設備を持ち、使われた量に応じて毎月お金をもらう会社。
売上のつくり方
利用者数×(基本料金+使った量)
ここがポイント
先に作って何十年で回収
先に設備をつくり、何十年もかけて回収する。だから経営は長期目線で、会社としての安定感はいちばん高い部類です。
国のルールに縛られる
値段も参入も、国のルールで縛られている。自由に値上げできない代わりに、簡単に競合が現れない世界です。
安定を求める人に向く
安定を求める人には向く。ただし急成長も急な昇給も起きにくい。太陽光など新しい領域だけは、これと違うスピードで動いています。
先に大きく作って、何十年もかけて回収する商売。
インフラ会社には、こういう役割の人たちがいます
売っているのは形のあるモノではなく信用と安心。お金そのものを商品にしている、少し特殊な業種です。
お金を貸して利息をもらう、または保険料を集めて万一のときに払う会社。
利益のつくり方
受け取る利息−払う利息−焦げつき
ここがポイント
集めて、備えて、払う
保険は「集めて、備えて、払う」商売。大勢から少しずつ集め、事故に遭った人にまとめて払う。払いすぎないよう見極める仕事が中にあります。
売っているのは信用
売っているのは信用。だからルールと手続きが極めて厳しく、資格の取得が前提になる求人がほとんどです。
数字が明確=目標も明確
数字が明確な分、目標も明確。成果が分かりやすい世界を求める人には合いますが、その厳しさも込みで考えてください。
信用を売って、焦げつかせないことで利益を守る。
金融機関・保険会社には、こういう役割の人たちがいます
どの業種も、良し悪しではなく仕組みの違いとして説明してください。転職しない選択も含めて、本人が決めるための材料です。